オズの魔法使い・日本語訳 |
21 ON NET ( Quoted from The Wonderful Wizard of Oz ) The Wonderful Wizard of OzL. Frank Baum Chapter 1 The Cyclone ![]()
ドロシーは農夫のヘンリーおじさん、その奥さんのエムおばさんと一緒にカンザスの大草原の真ん中で暮らしていました。
ドロシーが戸口に立って見まわすと、どっちを向いても灰色の大草原しか見えません。見渡す限りの広い平原はどの方角へも空の端まで続き、木の一本、家の一軒もありませんでした。
エムおばさんがそこに来て住み始めた時、おばさんは若くてきれいな奥さんでした。 ドロシーを笑わせて、まわりと同じ様な灰色になるところを救ってくれたのはトトでした。トトは灰色ではありませんでした。トトは小さな黒い犬で、毛はつやつやで長く、ひょうきんでちっちゃい鼻の両側に小さな黒い目が陽気にきらめいていました。トトは一日中遊び、ドロシーも一緒に遊んでトトをとても可愛がりました。 / 04
でも今日は、遊んではいませんでした。ヘンリーおじさんは戸口の段に座って、いつも以上に灰色な空を心配そうに眺めていました。 ヘンリーおじさんは突然、立ちあがりました。 「竜巻が来るぞ、エム」おじさんはおばさんに言いました。「家畜を見てくる。」そうしておじさんは牛と馬を飼っていた小屋へ走って行きました。おばさんは仕事をやめて戸口に来ました。おばさんはひと目で危険が迫っていると知りました。 「ドロシー、早く!」おばさんは叫びました。「地下室へ走りなさい!」
トトがドロシーの腕から飛び出てベッドの下に隠れてしまったので、ドロシーはトトを捕まえようとしました。ひどく怯えたエムおばさんは、床の落し戸を振り上げて、小さな暗い穴の中へ梯子を降りていってしまいました。ドロシーはやっとトトを捕まえて、おばさんの後をついて行こうとしました。ドロシーが部屋の半ばまで横切った時、風の甲高い音が聞こえ、家が激しく揺れたのでドロシーは足場をなくして、急に床の上に座り込んでしまいました。 / 06 そして奇妙なことが起こりました。 家は二、三度ぐるぐる回ってゆっくりと宙に昇ってゆきました。ドロシーは風船の中で昇っていっているような感じがしました。
家が立っているところで北と南の風がぶつかって、竜巻のちょうど真ん中になってしまいました。ふつう竜巻の真ん中の空は静かなのだけれど、風が強い圧力で家を取り巻いて、どんどん高く、竜巻のてっぺんまで持ち上げたのです。家はそのまま、まるで羽毛を飛ばすぐらいすんなりと、ずっとはるか遠くに運ばれてしまいました。 / 07 とても暗くて、ドロシーの周りでは恐ろしく風がうなっていました。でもドロシーは、かなり安々と乗っかっていたことに気付きました。初めに家が何度か旋回した後に、もう一度ひどく傾いた時、ドロシーはゆりかごの中の赤ん坊みたいに優しく揺られているように感じました。 トトはこれが嫌でした。うるさくほえながら、部屋中あっちこっち走りまわりました。でもドロシーは床にじっと座って、成り行きを見守っていました。
一度、トトが開いた落し戸に近づきすぎて中に落ちてしまった時、最初少女はトトを失ってしまったと思いました。でもすぐに、トトの片方の耳が穴の中から突き出ているのが見えました。空気の圧力がトトを持ち上げていて、落ちなかったのです。ドロシーは穴まで這っていって、トトの耳をつかんで部屋の中に引きずり戻しました。その後で、もう事故が起こらないように落し戸を閉じました。 / 08
何時間も経って、ドロシーはゆっくりと恐れを乗り越えました。でもとても寂しかったのでした。風が周りでとてもうるさい金切り声を上げたので、ドロシーはほとんど耳が聞こえなくなったくらいです。
家が揺れ、風はむせび泣いていたのに、ドロシーはすぐに目を閉じてぐっすりと眠入ったのでした。 / 09 お終い |
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